グループの研究内容
ICRP2007年基本勧告に基づく線量評価法の開発
環境放射性核種に対する線量換算係数の評価
東京電力福島第一原子力発電所の事故では、大量の放射性核種が放出され、広範囲にわたる大気、水、土壌等の環境汚染を引き起こしました。
これらの汚染に対する復旧対策を立案するにあたっては、放射性核種に起因する外部被ばく線量を評価する必要があります。
この要求に応えるため、新生児から成人までの公衆を代表する複数の年齢に対して、
最新の放射線防護の知見を反映して、大気、水および土壌に分布した放射性核種(1252核種)からの外部被ばく線量の評価に利用できる線量換算係数を、
以下の手法により整備しました。
1.大気、水、土壌を模擬した広範な計算体系に、単色エネルギーの光子および電子を放出する線源を配置し、環境における散乱や吸収等の様々な相互作用を考慮した放射線場を、大規模放射線輸送計算により解析
2.解析された放射線場に、新生児から成人までの人体を精密に模擬するボクセルファントム[1](図1)を配置し、人体内の放射線場を解析して臓器吸収線量およびICRP2007年基本勧告[2]に対応した実効線量を計算
3.計算した単色エネルギー線源に対する実効線量に、ICRP Publication 107[3]の放射性核種崩壊データを適用し、放射性核種毎の実効線量換算係数を導出
4.新生児から成人までの代表的な年齢における線量評価に用いるデータを整備
計算結果の一例として図2に、土壌に放射性セシウムが分布した際の成人男女を模擬したICRPリファレンスファントムで計算した臓器吸収線量を示します。
また表1に、それらを解析して導かれた実効線量換算係数を示します。
今後は、整備したデータベースを基に迅速に外部被ばく線量を評価するソフトウェアを開発し提供する予定です。
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図1: 実効線量計算に使用したICRP/ICRUの成人リファレンスファントム[1] (左:男性、右:女性)。
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図2: 土壌深さ0.5 g/cm2に分布したCs-134およびCs-137による 成人男女の臓器吸収線量[4,5]。
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表1: 成人に対する土壌に分布したCs-134およびCs-137の放射能濃度から 実効線量への換算係数(mSv/h per kBq/m2)[4,5]。 |
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関連論文
[1] ICRP Publication 110 (2009).
[2] ICRP Publication 103., Ann. ICRP 37 (2-4) (2007).
[3] ICRP 38 (3) (2008).
[4] 佐藤大樹ら, JAEA-Research 2014-017 (2014).
[5] D. Satoh et al., J. Nucl. Sci. Technol., 1021286 (2015).
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