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材料モデル評価研究グループでは、計算科学的手法による原子力用構造材料および燃料の複合環境下における劣化現象の機構解明や挙動予測を行うことを目的とした研究を行っています。ミクロからマクロスケールまでのマルチスケールモデリング手法によるシミュレーションと高精度な実験との比較検討を行うことにより機構論的なモデルを構築しています。将来的には、そのモデルに基づく材料・燃料挙動シミュレーションによる次世代原子炉用材料および燃料の開発も目指しています。
参考資料
Y. Kaji et al., "Development of Stress Corrosion Cracking Model for Reactor Structural Materials", The 16th Pacific Basin Nuclear Conference, (2008)
高経年化軽水炉の炉内構造物・配管等において多くの発生事例がみられる応力腐食割れを理解することは、高経年化プラントの健全性評価の精度向上を実行するうえで非常に重要であり、応力腐食割れの発生防止及び進展予測についての試験・研究を行うことが必要です。応力腐食割れの発生・進展にはさまざまな要因(応力、環境による腐食、熱偏析、照射環境では照射誘起偏析、カスケード損傷、環境中ラジカル生成等)があり、それらが複雑に影響し合うことで材料の損傷に至ると考えられるため、機構解明にはそれらの諸要因を総合的に考慮する必要があります。
原子力発電所の使用済み燃料の中には、長寿命放射性核種であるマイナーアクチノイド(MA)が含まれており、MAの放射性毒性が大きな問題となっています。このMAの放射性毒性による環境への負荷を軽減する技術の一環として、MAを含有した酸化物や窒化物の燃料が提案されており、これらの燃料の諸物性の評価が必要です。
MA含有燃料の一つであるAm含有混合酸化物(Am-MOX)燃料の開発に関する基礎データとして測定したAm酸化物のX線吸収微細構造(XANES)の解析を、第一原理計算により行っています。また、MA含有窒化物燃料に関して、第一原理計算を用いて、電子構造の視点からアクチノイド窒化物の様々な特性を予測するとともに、化学反応の解析を行っています。