炉内構造材、燃料被覆管等の金属材料の放射線損傷挙動に関する研究

「次世代原子炉」は、現行の原子炉よりも更に効率・安全性を高めるとして、世界的に注目を集めています。しかし、より高効率になるということはそれだけ高温環境であると同時に放射線量が大きくなるため、原子炉を構成する金属材料は、より過酷な環境に晒されます。過酷環境に耐えうる材料開発を行うためには、材料の放射線照射劣化挙動を理解することが最重要課題となります。そこで我々のグループでは、以下のような研究を行っています。


FeCr合金におけるCrリッチ相形成メカニズムの解明

次世代炉の中でも鉛冷却高速炉やナトリウム冷却高速炉、超臨界水冷却炉等は400〜600℃程度の高温で使用されるため、耐酸化性や耐照射性に優れるFe-Cr系合金の使用が検討されています。しかしながら、この中でもCr量が約20%を超える材料の場合、500℃付近での長時間の使用により、Crリッチ相が形成して材料が劣化してしまうことが明らかになっています。一方で実験手法の問題から、Crリッチ相形成の初期過程についての研究は実験的に明らかになっていません。このメカニズムを解明するために有効な手法として、異常X線小角散乱法を用いました。Fe-20wt.%Cr合金に475℃で長時間熱時効した際の分析結果を図1に示します。この結果から、熱時効時間の増加とともにCrリッチ相のサイズ・数密度増加が確認されました。また、熱時効時間10時間と100時間の間には析出形態の違いがあることが判明しました。今後、更に詳細な析出メカニズムを解明していく必要があります。

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Ni基酸化物分散強化合金における析出相の照射劣化挙動解明

次世代炉の中でも高温ガス炉やカス冷却高速炉は800〜1100℃程度の超高温で使用されるため、高温強度に優れるNi系合金の使用が検討されています。しかしながら、高温強度に寄与する析出相である、γ´相は600℃での放射線照射によって溶解し、高温強度低下の原因となることが明らかになっています。そこで新たに、改良したNi基酸化物分散強化合金を用いてγ´相の安定性を評価しています。照射環境の模擬には高崎量子研究開発機構のTIARA加速器を用いています。イオン照射によって損傷を導入した組織を図2に示します。γ´相は800℃までの照射では形状を維持していますが、一方で1000℃での照射では照射域一面に粗大に析出していることが判明しました。この現象は、放射線照射によって系の自由エネルギーが上昇し、各相の組成が均一になる方向に反応が進行したことと、イオン照射が高真空環境下で行われたために元素の蒸発が起こったことに起因すると考えられます。現在、より正確な照射下安定性評価を行うため、蒸発が起こらない実機環境を模擬できる装置を用いた研究を行っています。

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