グループの研究内容
ICRP2007年基本勧告に基づく線量評価法の開発
土壌に沈着した放射性セシウムに対する個人線量計によって測定される個人線量当量のシミュレーション解析
通常、個人線量計は、原子力施設や放射線施設で、放射線源に対面する作業者の被ばく管理に利用します。
この線量計では、身体正面から入射する放射線に対して、線量計を装着した位置における身体中の一定深さ(通常、1cm)の線量が測定値として得られます。
この身体中の一定深さの線量は「個人線量当量」といい、ファントムと呼ばれる人体模型の表面に線量計を配置し、
その正面から既知の線量の放射線を照射することで、「個人線量当量」を正しく表示するよう放射線照射施設において校正されます。
このように校正された線量計で測定する個人線量当量によって、正面から飛来する放射線に対する作業者の被ばく線量(実効線量)を過小評価することなく
合理的に管理できることは既に確認されております
(放射線防護のために定義されている線量とその相互関係)。
東京電力福島第一原子力発電所(福島第一原発)事故後、公衆の被ばく線量を把握するため、個人線量計を用いた被ばく線量管理が行われています。
しかし、原子力施設における作業者の場合とは異なり、線量計を装着した人体への放射線の入射方向は一定ではありません。
そこで、環境中(土壌)に沈着した放射性セシウム(Cs-134及びCs-137)による多方向入射の被ばくに対し、
放射線照射施設で校正した線量計が測定する個人線量当量と実効線量の相関関係を解析しました [1]。
ここでは、環境中の放射性物質に対する被ばく線量評価のために開発した大規模な放射線輸送計算手法
(環境放射性核種に対する線量換算係数の評価)を活用し、
その環境下に配置した年齢別の人体モデル(新生児、1歳、5歳、10歳、15歳、成人男女)の胸部に装着した線量計において得られる個人線量当量を計算しました。
その結果、シミュレーションによる解析値は、福島で成人男性が装着した個人線量計によって取得された実測値 [2] を非常によく再現していることを確認しました。
また、既に解析した実効線量の解析結果と比較したところ、線量計による各年齢群の個人線量当量は、実効線量を過小評価することなく、
合理的に評価できることが明らかになりました(図1)。
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図1:土壌に沈着したCs-134に対する実効線量(E)と個人線量(Hp(10))の関係
*1)年齢別の実効線量は、ICRP2007年勧告で定義された実効線量の算出方法を、各年齢の人体モデルで得られた臓器吸収線量の計算結果に適用して導出しています。
*2)エラーバーは、1標準偏差の形式で統計誤差を示しています。
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原子力規制委員会は、福島第一原発事故後の平成25年11月に、帰還へ向けた安全・安心対策に関する検討において、
住民の帰還にあたっては「個人線量計等で実測された個々人の被ばく線量(個人線量)による評価を基本とする」ことを示しました。
当グループの解析、整備したデータは、福島第一原発事故後の公衆に対して実施している測定結果から実効線量を与える有益なものです。
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研究成果に関係するリンク
土壌に分布した放射性セシウムによる外部被ばくに対する個人線量当量のシミュレーション研究
土壌中の放射性セシウムによる外部被ばくに対する年齢に依存した線量換算係数
関連論文
[1] D. Satoh et al., J. Nucl. Sci. Technol., 54, 1018-1027, (2017).
[2] 放射線医学総合研究所、日本原子力研究開発機構「東京電力(株)福島第一原子力発電所事故に係る個人線量の特性に関する調査」2014.
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