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隣り合えない元素はどこまで混ざるのか?限界濃度を予測
~結晶幾何学から導く新理論で合金設計を加速~

2026.03.13


原子力基礎工学研究センターは、合金材料設計のための汎用的な指針の獲得を目的として、添加元素の数理モデルを構築しました。

添加元素の並び方は、合金の強さや耐食性などの性質を決める重要な要因です。添加元素同士に反発力が働く場合、その並び方は、均一に分布しつつも互いに隣接しないという複雑なパターンになります。そして、添加元素同士が隣接するまで添加濃度を高めると、強度(硬さ)や靭性(粘り強さ)などの機械的な特性が大きく変化することがあります。例えば、原子力材料として研究・開発が進められている鉄-クロム-アルミニウム合金では、アルミニウム原子が隣り合うまで添加量を増やすと材料の強靭性が増すことが知られています。そのため、反発する添加元素の濃度上限(飽和濃度)は合金の材料組成を決定する上で重要ですが、原子1個単位の並び方を実験で調べるのは難しく、飽和濃度を理論的に予測する方法が求められていました。 そこで、本研究では、「互いに隣り合わないように添加元素を追加していくと、どの程度まで濃度を高めることができるのか?」を、数値シミュレーションと数理モデリングにより計算する新たな理論を確立しました。この理論は、複雑な原子配置の問題を「結晶の幾何学」という普遍的な性質だけで記述できることを示しており、物質によらず成り立つ一般理論として機能します。ランダムに配置される原子がどこまで隣接を回避できるかを、厳密かつシンプルな理論式で表せたことは学術的にも画期的な成果です。

確立した新理論では、取り扱う材料の種類を問わないので、さまざまな合金材料の設計に利用できます。鉄-クロム-アルミニウム合金だけでなく、ハイエントロピー合金など多元系材料の元素組成比を決める上での理論的な指針として活用できます。

本研究成果は2026年3月12日(現地時間)、英国の学術誌 Scientific Reportsに掲載されました。
論文情報:https://doi.org/10.1038/s41598-025-30829-1

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世界初、指先サイズの中性子線源で実現!卓上型の非破壊同位体分析装置
~核物質同位体をその場で識別へ~

2026.02.03


図 1 従来型NRTA装置(左)と開発した卓上型NRTA装置(右)の比較

原子力基礎工学研究センターは、核燃料の適切な管理や核物質の不正利用防止に不可欠な核物質同位体の非破壊測定に適用可能な卓上型装置の実現に向け、重要な一歩となるプロトタイプ装置を開発しました。

ウランやプルトニウムといった核物質には、中性子数の異なる複数の同位体が存在します。これらの同位体組成は、核燃料としての適性や兵器への転用可能性といった重要な特性を決定づけます。このため、核物質の総量だけではなく、どの同位体がどの程度含まれているかを正確に把握することは、核不拡散や核セキュリティの分野において極めて重要な課題です。

既存の一般的な非破壊分析技術では同位体の識別は困難であり、中性子共鳴透過分析法(NRTA)は同位体識別が可能な非破壊分析技術ですが、その実施には大型加速器や中性子発生装置などの特殊設備を必要としていました。このため、スペースが限られた施設や非管理区域、屋外などでのNRTA測定は容易ではありませんでした。 この問題の解決のため、原子力基礎工学研究センターは、指先サイズの中性子線源にカリホルニウム252を利用したNRTA技術を確立し、特殊設備に依存せずに同位体の識別を可能とする世界初の装置を開発しました(図1)。核物質と共鳴エネルギーが近い模擬試料を用いた試験では、同位体の種類を判別できることを実証しました。これにより、従来はNRTAの適用が容易ではなかった環境下や、現場に装置を移動してその場で核物質同位体の非破壊測定を実施できる可能性を拓きました。

本研究成果は、核物質の同位体測定を可能とする小型NRTA装置の実用化に向けた重要なマイルストーンです。今後は、実際の核物質を用いた実証研究や測定精度の向上、分析対象の拡大を進めていきます。本技術は、核不拡散と核セキュリティの強化に貢献するだけでなく、考古学分野における貴重な文化財の年代測定・産地推定、宇宙探査で回収された試料の分析など、非破壊で同位体組成を調べる必要のある幅広い分野への展開も期待されます。

本研究成果は、2026年1月23日、Nature系列のオープンアクセス誌「Communications Engineering」に掲載されました。
論文情報:https://doi.org/10.1038/s44172-025-00564-6

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