

トップページ > 受賞
2026.03.30

原子力基礎工学研究センター原子力基盤技術開発グループの中村聡志技術員は「1F燃料デブリの化学分析に向けた溶解手法の開発と実試料への適用」の業績が評価され、令和8年3月12日に第58回日本原子力学会賞奨励賞を受賞しました。
福島第一原子力発電所(1F)事故で発生した燃料デブリの性状把握は,燃料デブリ取り出し工法策定、臨界管理、保管や事故進展解析等に必須の情報です。このデブリ性状把握の主要項目である元素・核種組成の評価には、燃料デブリを完全に溶解し化学分析する必要があります。しかし、燃料デブリは化学的安定性が高くこれまでの知見では完全溶解が困難であると考えられていました。本研究では「過酸化ナトリウムを用いたアルカリ融解処理法」に着目し、燃料デブリを全溶解する元素組成分析法を検討しました。処理条件を最適化し、TMI-2デブリに適用する試験により、本手法の有効性を実証しました。本成果を日本原子力学会英文誌(JNST)にて公表しました。また,開発した溶解手法を、1F 2号機の試験的取り出し(1回目)で得られた燃料デブリサンプルに適用し,完全溶解に成功しました。本溶解液の分析により得られた主要元素および核種組成は、1F 炉内状況の把握に重要な知見を提供するものです。本成果は日本原子力学会2025年秋の大会にて報告しました。これらの成果は、今後1F 廃炉の完了まで長期にわたり化学分析の前処理法として活用が期待されます。
2026.03.19

放射線挙動解析研究グループの佐藤達彦研究フェローらは、日本原子力学会英文誌 Journal of Nuclear Science and Technology に掲載された論文「Recent improvements of the particle and heavy ion transport code system–PHITS version 3.33」(J. Nucl. Sci. Technol., Vol. 61, No. 1, pp. 127-135, 2024)により、2026年3月12日にJNST Most Popular Article Awardを受賞しました。
PHITS(Particle and Heavy Ion Transport code System)は、ほぼ全ての粒子・重イオンの輸送挙動を高精度に解析できる日本発の汎用モンテカルロ放射線挙動解析コードであり、原子力、医療、宇宙、加速器、放射線防護など、多様な分野で広く活用されています。受賞対象となった本論文では、PHITS version 3.33における最近の改良点として、核データライブラリとの整合性向上、飛跡構造解析モードのアルゴリズム改良、ならびに各種物理モデルや計算機能の拡張について報告しました。これらの改良により、計算精度と利便性がさらに向上し、PHITSの適用範囲が一層広がりました。
今回の受賞は、PHITSの継続的な高度化と、それを通じた原子力・放射線分野への学術的および実用的な波及効果が広く認められたものです。
【受賞論文】https://doi.org/10.1080/00223131.2023.2275736
2026.01.09

放射線挙動解析研究グループの 関川卓也 研究員が、第38回超電導国際会議(International Symposium on Superconductivity 2025, ISS2025)Electronic Device分野においてBest Presentation Awardを受賞しました。
題目:「Energy loss functions for electronic mode of Si, Al, and TiN substrate materials used in quantum computing based on first-principles electronic structure calculations」
量子コンピュータへの超伝導応用は近年重要性を増していますが、超伝導が実現する極低温(10 mK ~5 K)では、環境中の放射線が超伝導状態を崩壊させる一因となることがわかっています。この現象を理解するためには、極低温条件で超伝導材料中の放射線輸送計算を行う必要があります。
そこで、極低温条件下での物質中の放射線輸送計算に必要な基礎データである、極低温条件下のエネルギー損失関数を理論計算で求めることを目標にしました。エネルギー損失関数には、電子系からの寄与である電子モードと、結晶中の原子核の振動からの寄与である格子モードの二つの部分にわけられますが、本研究では、まず物質中の放射線輸送を支配する電子モードのエネルギー損失関数に注目し、超伝導量子コンピュータの材料であるSi, Al, TiNのエネルギー損失関数を常温と極低温で計算しました。その結果、電子モードのエネルギー損失関数は温度による違いがないことを確認しました。
今後、弾き出された自由電子の運動エネルギーを熱エネルギーに変換する計算に必要な、格子モードのエネルギー損失関数を計算し、量子コンピュータ材料中の放射線輸送計算を行う予定です。本研究課題は、超伝導量子ビットの放射線耐性技術の開発に貢献することが期待されます。
2026.01.07

環境動態研究グループの中山浩成研究主幹らは、「都市域放射線テロ発生時における建物影響範囲に関するLHADDAS大気拡散・線量解析」に関して、第46回日本核物質管理学会年次大会において優秀論文賞を受賞しました。
放射線テロ発生時における危険区域設定として,事象規模に応じて中心位置から半径数10 mから数100 mの同心円状として考えることが一般的です。しかし,都市市街地内では,複雑な気流場が生じるため,同心円状とは異なる非一様性の強い大気中濃度・沈着分布が形成されます。そこで,日本原子力研究開発機構が開発した局所域高分解能大気拡散・線量評価システムLHADDASにより,特徴的な建物配置形態を示す実際の都市市街地を対象にした高分解能大気拡散・線量計算を行い,都市ビル群が空間線量率分布に与える影響範囲を調べました。その結果,建物影響は発生地点から1 km程度まで及びうることが明らかになりました。都市域での放射性物質拡散テロ対策における事前検討やリアリティのある実働訓練への活用に役立てられます。
【受賞論文】第46回 日本核物質管理学会年次大会会議論文集