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2025.01.23
原子力基礎工学研究センターは、新潟大学、九州大学との共同研究により、温暖化に伴う降水パターンの変化によって引き起こされる土壌の乾燥と湿潤の繰り返しによって、土壌から放出されるCO2の量が大きく増大することを明らかにしました。
大気中のCO2濃度の上昇は、地球の温暖化を引き起こし、さらには地球規模での水の大循環にも影響を及ぼすことで、世界各地の降水パターンを大きく変化させつつあります。こうした降水パターンの変化は、単なる年間降水量の増減だけでなく、極端豪雨や干ばつなどの頻度を増大させ、土壌の乾燥と湿潤の繰り返しを引き起こすことが危惧されています。土壌の乾燥と湿潤の繰り返しは、土壌における有機炭素の分解とそれに起因したCO2放出(地球全体で人為起源排出量の約5倍に相当)に大きく影響を及ぼす可能性があります。本研究では、国内各地の10地点の森林から採取した土壌を、降水パターンの変化に伴う乾燥と湿潤の繰り返しを模擬した条件で84日間室内培養し、CO2放出量の変化を評価しました。その結果、全ての土壌において、CO2放出量は乾燥と湿潤の繰り返しによって増大し、土壌水分量が変化しない条件でのCO2放出量の1.3~3.7倍になることが明らかになりました。さらに、このCO2放出量の増大は、乾燥と湿潤の繰り返しによる微生物細胞の破壊と分解に加え、土壌炭素の蓄積に寄与している活性金属―有機物錯体成分の分解促進により引き起こされている可能性が示されました。本研究成果は、気候システムにおける炭素循環フィードバックの詳細解明に繋がるものであり、地球環境の将来予測モデルの予測精度向上に資することが期待されます。
本研究成果は、欧州地球科学連合発行の科学誌「SOIL」に2025年1月16日付でオンライン掲載されました。
論文情報:https://soil.copernicus.org/articles/11/35/2025/
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