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世界初、指先サイズの中性子線源で実現!卓上型の非破壊同位体分析装置
~核物質同位体をその場で識別へ~

2026.02.03


図 1 従来型NRTA装置(左)と開発した卓上型NRTA装置(右)の比較

原子力基礎工学研究センターは、核燃料の適切な管理や核物質の不正利用防止に不可欠な核物質同位体の非破壊測定に適用可能な卓上型装置の実現に向け、重要な一歩となるプロトタイプ装置を開発しました。

ウランやプルトニウムといった核物質には、中性子数の異なる複数の同位体が存在します。これらの同位体組成は、核燃料としての適性や兵器への転用可能性といった重要な特性を決定づけます。このため、核物質の総量だけではなく、どの同位体がどの程度含まれているかを正確に把握することは、核不拡散や核セキュリティの分野において極めて重要な課題です。

既存の一般的な非破壊分析技術では同位体の識別は困難であり、中性子共鳴透過分析法(NRTA)は同位体識別が可能な非破壊分析技術ですが、その実施には大型加速器や中性子発生装置などの特殊設備を必要としていました。このため、スペースが限られた施設や非管理区域、屋外などでのNRTA測定は容易ではありませんでした。 この問題の解決のため、原子力基礎工学研究センターは、指先サイズの中性子線源にカリホルニウム252を利用したNRTA技術を確立し、特殊設備に依存せずに同位体の識別を可能とする世界初の装置を開発しました(図1)。核物質と共鳴エネルギーが近い模擬試料を用いた試験では、同位体の種類を判別できることを実証しました。これにより、従来はNRTAの適用が容易ではなかった環境下や、現場に装置を移動してその場で核物質同位体の非破壊測定を実施できる可能性を拓きました。

本研究成果は、核物質の同位体測定を可能とする小型NRTA装置の実用化に向けた重要なマイルストーンです。今後は、実際の核物質を用いた実証研究や測定精度の向上、分析対象の拡大を進めていきます。本技術は、核不拡散と核セキュリティの強化に貢献するだけでなく、考古学分野における貴重な文化財の年代測定・産地推定、宇宙探査で回収された試料の分析など、非破壊で同位体組成を調べる必要のある幅広い分野への展開も期待されます。

本研究成果は、2026年1月23日、Nature系列のオープンアクセス誌「Communications Engineering」に掲載されました。
論文情報:https://doi.org/10.1038/s44172-025-00564-6

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