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2015.06.09
長縄弘親、永野哲志、美田豊
環境化学研究グループの永野哲志研究主幹、長縄弘親研究主席、人形峠環境技術センターの美田豊技術副主幹は、「エマルションフロー法による除染廃液浄化技術の開発」により、平成27年3月21日に第47回日本原子力学会・技術賞を受賞しました。
受賞者らは、簡便・安全・低コストと迅速・高効率が両立した新しい液-液抽出の方法“エマルションフロー法”を利用して、ウランを含んだ多量の放射性廃液から高選択的にウランを除去する技術を開発しました。この方法では、従来のミキサーセトラー法などを用いる液-液抽出やイオン交換樹脂などを用いる方法の10倍以上の迅速さで、かつ5分の1以下の低コストで、除染廃液中のウランを排水基準値以下の濃度にまで浄化できます。また、装置本体に駆動部を持たないので、トラブル発生が少なく、より安全性の高い方法です。エマルションフロー法は、国内の放射性廃液の処理等に広く役立つと期待できます。また、原子力分野以外にも、廃液・廃棄物からのレアメタル回収などで注目を集めています。
2015.04.23
寺田宏明、茅野政道、永井晴康、堅田元喜
エネルギー需要の増大等を背景に、世界的に原子力施設が増加しつつある状況において、放射性物質の大量放出を伴う事故時の対策には、放射性物質の飛来予測が重要な情報となります。そこで、世界の任意地点での原子力事故に対して大気拡散・地表沈着・被ばく線量を詳細かつ迅速に予測できるシステムを、精緻な拡散・沈着プロセスを考慮した予測計算モデルと先進的な計算支援機能に基づいて開発し、野外実験や事故データによりその性能を実証しました。本開発によって、福島第一原発事故ではいち早く放射性物質の大気放出量や拡散状況を解析でき、その結果は国内のみならず、世界保健機関(WHO)や国連科学委員会(UNSCEAR)でも、影響評価に活用されました。また、北朝鮮核実験時には、国内関係機関への放射性物質の拡散予測情報の提供に利用されました。このように本システムは、実用としての完成度は高いといえます。得られる成果は、国内外の原子力事故に対し、国や自治体が行うモニタリング計画や国民の安全確保に必要な情報を提供することで、対策に寄与するものです。また、高い予測性能は、環境負荷物質のリアルタイム広域大気拡散予測のような非原子力分野のニーズにも寄与しています。
2015.04.23
山澤弘実、寺田宏明、永井晴康
環境動態研究グループの寺田宏明研究副主幹、永井晴康研究主席、名古屋大学の山澤弘実教授が、「Validation of a Lagrangian atmospheric dispersion model against middle-range scale measurements of 85Kr concentration in Japan」(J. Nucl. Sci. Technol., Vol.50, 1198-1212 (2013))で、平成27年3月21日に第47回日本原子力学会賞論文賞を受賞しました。
受賞対象の論文は、水平距離で数100km程度の中距離スケールにおける大気拡散モデルの性能評価に関するものです。これまで、このスケールにおけるモデルの性能検証は、利用可能なデータがなかったため十分に行われていませんでした。本研究では、六ヶ所再処理施設を起源とする85Krの大気拡散に着目し、国内数地点における大気中85Kr濃度の測定値を用いて中距離スケールでのラグランジュ型粒子拡散モデルの性能評価を行うとともに、格子解像度に応じた合理的な水平拡散係数を求める方法を提案しました。
2015.04.23
小林卓也
環境動態研究グループの小林卓也研究主幹が、日本原子力学会英文誌(JNST)に投稿した論文「Source term estimation of atmospheric release due to the Fukushima Dai-ichi Nuclear Power Plant accident by atmospheric and oceanic dispersion simulations」(J. Nucl. Sci. Technol., Vol.50, 255-264 (2013))が、平成27年3月21日にJNST2014年度最多ダウンロード数論文賞を受賞しました。
本論文は、既往の研究によって推定された福島第一原子力発電所事故の大気放出量推定結果(I-131, Cs-137)の検証と、大気・海洋拡散シミュレーションと北太平洋海域における表層Cs-134濃度の観測値を用いた大気放出量の再推定に関するものです。その内容は次の通りです。Cs-134とCs-137の放出率が同一であると仮定し、既往の大気放出量推定結果を用いて表層海水中Cs-134濃度を計算し、観測値と比較したところ、観測値に対して計算値が過小に評価する海域が北東太平洋で確認されました。そこで、放出期間を細かく分割し、それぞれの期間における大気放出量推定値を用いた大気・海洋拡散シミュレーションを実行し、各海洋観測点における表層海水中Cs-134濃度に対する分割した期間ごとの寄与率を計算しました。そして、観測値と計算値が一致するように、寄与率を基に各期間の大気放出量を調節しました。その結果、過去の推定値よりも大きい大気放出量になることが推定されました。
2015.04.23
放射線挙動解析研究グループの佐藤達彦研究主幹らが日本原子力学会英文誌(JNST)に投稿した論文「Particle and Heavy Ion Transport Code System PHITS, Version 2.52」(J. Nucl. Sci. Technol., Vol.50, 913-923 (2013))が、平成27年3月21日にJNST2014年度最多ダウンロード数論文賞を受賞しました。
PHITSとは,原子力機構、高度情報科学技術機構、高エネルギー加速器研究機構などと共同で開発を進めているモンテカルロ計算コードです。このコードは、広範なエネルギーの様々な粒子の放射線挙動について、核反応モデルや核データなどを用いて取り扱うことができます。受賞した論文では,2013年にリリースしたPHITS version 2.52の新機能などに関して詳しく紹介しています。PHITS2.52は、以前にリリースされたPHITS2.24から、コードのみならず、付帯するデータライブラリのようなパッケージについても改良してきました。これらの改良により、PHITSは放射線施設の設計,医学物理計算,放射線防護研究,宇宙線・地球惑星科学など,工学,医学,理学の様々な分野での粒子輸送シミュレーションに適用可能な強力なツールとなりました。