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詳細二相流解析コードTPFIT

TPFITは、気体と液体の混ざった流れである「気液二相流」の挙動を詳細かつ高精度に予測できる計算プログラムです。気液 二相流は、原子力を含 む発電所、化学プラントなど、熱を取り出す、気体と液体を反応させる場面において幅広く応用されている流れです。気液二相流の予測は、経済性や安 全性の向上の観点から求められていますが、気液二相流の特徴の、気体と液体の間に「(気液)界面」が存在するため、気体のみや液 体のみの流れであ る「単相流」と比べて、計算するためには多くの課題があります。 TPFITは、日本原子力研究開発機構で独自に開発した「改良界面追跡法」と呼ぶ方法を用いることで、界面の移動や変形を含めて計算することを可 能にしています。
TPFITの解析結果をレイトレーシング法で可視化した例

特徴: Features

改良界面追跡法の採用

界面が大きく変形したり、高速に移動したりする二相流を計算する場合、多くの解析プログラムでは、界面の数値拡散の影響による大きな解析誤差が発生す るか、非物理的かつ人為的な方法により界面の数値拡散を抑制しています。TPFITが採用する改良界面追跡法では、数値拡散 の影響を原理的に排除する ことができるため、非物理的かつ人為的な方法を用いずに、高精度な解析を実現します。また、多くの界面の移動や変形を取り扱う解析プログラムでは、液 体の体積割合の移動を計算していますが、改良界面追跡法では気体と液体の質量の移動を計算しているため、体積変化がある「圧 縮性流体」への対応も容易 に行う事ができます。

高並列計算への対応

TPFITは、ハードウェアやコンパイラーに依存したライブラリーなどを用いていないため、Windows、macOSやLinuxなど、 様々な環境での実行が可能です。また、並列計算におけるデファクトスタンダードである、MPI及びOpenMPによる並列計算に対応してお り、4,096並列で10億以上の計算セルを用いた解析を実行した実績があります。これにより、非常に大規模な体系内の二相流を比較的短期間 で実行することができます。

高い安定性

TPFITは、計算の安定性についても着目して開発されています。例えば、二相流を用いた除染機器であるベンチュリースクラバーでは、数十 m/sから数百m/sの高速の二相流が表れます。TPFITでは、流れの中に存在する小さな液滴の移動、変形を含めて解析を実行した実績があ ります。

リアルタイムの可視化への対応

特に、解析コードを使い始めた時や、新しい条件で計算を始めた時などでは、計算の進行状況を解析の進行に合わせて確認することが、正しい解析 を行う上で効果的です。TPFITでは、独自の可視化処理部を用いて、リアルタイム可視化を可能としています。

TPFIT実行時の様子

様々な計算条件への対応

TPFITでは、様々な条件での解析に対応するため、自由度の高い境界条件をコードの修正を行う事なく指定できます。例えば、時間的に変化す る条件としては、値の置き換え、SIN関数や一次関数に従う変化、リストからの入力などに対応しています。また、重力加速度についても、任意 に変化させることができるため、地震などの震動が与えられた場合の計算にも対応しています。

仕様: Specifications

TPFIT仕様

解析例: Examples

コップの水にストローで空気を吹き込む

ストローで空気を吹き込むと、コップの中に泡ができます。その後、できた泡は水面の方向に移動します。泡が吹き込まれることによる水面の上昇や、水面まで到達した泡が飛び 出す時に、水が小さな滴となって飛び散る様子などが再現されていることが分かります。 
TPFIT解析例1

振動する容器の中の気泡の運動

横200mm、高さ250mm、奥行き168mmの直方体容器内の水にノズルから空気を注入するとともに、横方向に1g、10Hzの振動を与えた場合の解析。振動は、横方 向の重力加速度を、SIN関数に従って変化させて与えました。
TPFIT解析例2a
下図は、その詳細で、白い線は圧力の等値線を表します。圧力の等値線と気泡の長軸の向きがほぼ一致するという、実験では得ることが難しい結論を解 析で得ることが出来ました。
TPFIT解析例2b