プレス発表

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1Fの格納容器内にたまった水の中で金属材料はどう腐食するのか?
〜放射線環境下での腐食データベースの構築〜

2021.10.07

原子力基礎工学研究センターは、日本原子力研究開発機構安全研究センター、廃炉環境国際共同研究センター、量子科学技術研究開発機構、大阪府立大学、東京工業大学、東北大学、東京大学と連携して、1F廃炉作業の安全対策に必要な、「放射線環境下での腐食データベース」を構築しました。このデータベースは、1F廃止措置特有の放射線環境下での腐食トラブルの発生可能性、腐食対策等を検討するうえで有用な情報である、①海水混入系での水の放射線分解(ラジオリシス)データ、および②放射線照射下での腐食試験データをデータベース化しました。また、③1F廃炉工程における潜在的腐食影響に関して検討した結果を腐食調査票データベースとして整理し、 「放射線環境下での腐食データベース」として取りまとめました。


本成果は、長期にわたる1F廃止措置をより安全に遂行するための足掛かりとして、保全対策の根拠や安全対策立案へつながることが期待できます。 「放射線環境下での腐食データベース」は、以下のURLより6月26日に公開されました。

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太陽フレアによる被ばくの脅威から航空機搭乗者を「合理的」に護る
〜経済的損失リスクの定量化により最適な航空機運用指針の策定が可能に〜

2021.09.03

原子力基礎工学研究センターは、京都大学,あいおいニッセイ同和損保、海上・港湾・航空技術研究所らと協力して,過去2000年間に発生した太陽フレアの頻度と強度、及び最新のシミュレーションにより得られた太陽放射線被ばく線量率の4次元空間時系列データを解析し、太陽放射線被ばくによる航空機運航計画変更に伴う経済的損失リスクの定量化に世界で初めて成功しました。その結果、被ばく回避のための低高度への飛行高度変更や欠航を必要とするような巨大な太陽フレアの発生頻度は約17年に1回で、その対策コストを考慮した1年あたりの経済的損失リスクは、毎日運航する長距離便の場合、最大約1,500米ドルであることが分かりました。この値は、火山噴火など他の航空リスクと比べてそれほど大きくなく、太陽フレアによる被ばくの脅威から合理的に航空機搭乗者を護ることができることを示唆しています。また、将来、航路上の積算被ばく線量をリアルタイムで推定可能となれば、そのリスクは更に1/3程度まで低減できることも分かりました。これらの成果は、太陽フレア時の最適な航空機運用対策指針の決定やその損害保険の開発に役立つと期待されます。 本研究において、原子力基礎工学研究センターは、様々な航路条件に対する被ばく線量評価を担当しました。本研究成果の詳細は、2021年9月2日に英学術誌「Scientific Reports」(Nature Research Journal)のオンライン版に掲載されました。

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最も分析困難な放射性核種の一つパラジウム-107の簡便な分析に成功
〜中性子を使った最先端技術により煩雑な化学的操作の必要がない分析が可能に〜

2021.08.05

原子力基礎工学研究センターの藤 暢輔グループリーダーらと学校法人早稲田大学教育・総合科学学術院の海老原 充教授は、即発ガンマ線分析(PGA)と中性子共鳴捕獲分析(NRCA)を組み合わせた分析法である飛行時間型即発ガンマ線分析法(TOF-PGA;以下、「新分析法」という。)によって、複雑な構成を持つ試料に含まれる最も分析が困難な放射性核種の一つであるパラジウム-107(107Pd)を化学的操作せずに分析することに世界で初めて成功しました。

放射性核種の存在量を最も容易に把握する方法は、測定対象から放出されるガンマ線を測定することです。しかしながら、使用済核燃料や福島第一原子力発電所に存在する燃料デブリに含まれている107Pdやテクネチウム-99(99Tc)など一部の放射性核種は、ほとんどもしくは全くガンマ線を放出しないため、「難測定核種」と呼ばれています。それらの難測定核種を化学的な操作をして分析する場合、手間と時間がかかること、放射性廃棄物が発生することや作業時の被ばくのおそれがあること、などの問題がありました。特に107Pdは650万年という長い半減期を持つため環境に放出されれば長期間にわたる影響が懸念されるうえ、化学的な分析も困難であることから最も分析が困難な放射性核種の一つとされており、その簡便な分析法の開発が待ち望まれていました。

研究グループはこれまでに、大強度陽子加速器施設(J-PARC)物質・生命科学実験施設(MLF)に設置した中性子核反応測定装置(ANNRI)において、新分析手法を開発してきました。今回、難測定核種107Pdや99Tcを含む模擬試料を用いて新分析手法の性能を確認したところ、混在する元素の影響をほとんど受けずに、107Pdや99Tcを正確に分析することができました。

新分析手法は高い分析性能を持ち、前処理が不要で溶解が困難な試料にも対応できるため、複雑な組成を持つ放射性廃棄物の分析などでの利用のほか、工学、理学、農学、医学などの学術から産業までの幅広い分野において、例えば貴重な考古学試料、隕石や小惑星試料、最先端材料の分析への応用も期待されます。 本研究成果は、米国の科学雑誌「Analytical Chemistry」に2021年7月9日(現地時間)に掲載されました。本研究はJSPS科研費JP17H01076の成果を含みます。

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核物質を非破壊で確実に検知
〜低コストで可搬性に優れた核物質検知装置の原理実証実験に成功〜

2021.06.07

原子力基礎工学研究センターの 米田政夫研究副主幹らと警察庁科学警察研究所田辺鴻典研究員、及び京都大学複合原子力科学研究所の北村康則准教授らは、新たな原理に基づく核物質検知装置を開発し、京大複合研においてその原理実証実験に成功しました。

空港や港湾等における核テロ対策装置には、主に以下の2つがあります。

  1. ① 安価で小型・可搬性に優れるが検知性能が十分でないパッシブ型検知装置
  2. ② 非常に高価で大型・持ち運びが出来ないが検知性能は高いアクティブ型検知装置(アクティブ装置)
高い検知性能を持つアクティブ装置は、規則的に強度が変動する放射線発生器が必要となるため、装置自体が高価で大型なものになります。そのためアクティブ装置を更に普及するためには、装置の低コスト化と小型化が課題となっていました。

本研究では、この課題解決のために、放射線源を高速回転させることにより放射線強度を疑似的に変化させるという回転照射の原理を考案し、試作機(回転照射装置)を製作しました。さらに、この回転照射装置と放射線検出器を組み合わせたアクティブ装置原理実証機でも、従来のアクティブ装置と同じように核物質を検知できることを実験によって確認しました。

この回転照射装置は、従来のアクティブ装置(約200x200x200cm)で用いられる放射線発生器(約3,000万円以上)より大幅な小型化(43x35x57cm)・低コスト化(約400万円)が望めます。さらに、放射線源として少量のカリホルニウム-252(Cf-252)を採用することにより、放射性同位元素(RI)の許認可申請の必要がない表示付認証機器※とすることができるというメリットもあります。このため、全国の運輸関連施設等における検査だけでなく、大規模イベントにおける不審物検査等にも適しています。今後、警察による初動対応などを視野に入れた研究を進め、早期の実用化を目指します。

本研究成果は、オランダの科学雑誌「Annals of Nuclear Energy」に2021年5月20日(現地時間)に掲載されました。本研究はJSPS科研費JP17K07016の成果を含みます。

※ RIの量が少なく、機器の使用に際して被ばく等のおそれが低いものについて、原子力規制庁から当該機器に対する設計認証を得た場合、認証を得た旨を機器に表示することによって使用等の規制が大幅に緩和され、機器の取扱いや管理が非常に容易になる。


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新たな中性子利用開拓の鍵となる高精度核反応計算手法を開発
〜計算結果を基礎科学や医療等での中性子利用に資するデータベースとして公開〜

2021.02.12

原子力基礎工学研究センターは、九州大学、大阪大学と共同で、重陽子による核反応からの中性子発生量を高精度に予測する計算手法を開発しました。また、その予測値を基に中性子源の設計のための核反応データベースJENDL/DEU-2020を整備し、公開しました。

原子核物理や医療などの分野では、10MeVを超える高いエネルギーをもった中性子が大量に必要とされはじめています。しかし、原子炉などを用いた従来の中性子源では、こうした要求を満足させる中性子を供給することはできません。そこで、新たな中性子源として、重陽子による核反応を利用したものが注目されています。

利用目的に応じた様々な仕様の中性子源を設計し、性能を検討するには、重陽子による核反応から発生する中性子の量を様々な条件(衝突させる重陽子のエネルギー、標的となる原子核の種類など)で精度良く予測できなければなりません。しかし、従来の予測手法では広範な条件での信頼性の高い予測ができませんでした。これは、重陽子が持つ量子力学的な「波」としての性質を十分に取り入れておらず、重陽子が陽子と中性子に分解する過程を適切に計算できていなかったためです。

本研究では量子力学的効果を考慮した複数の理論モデルを組み合わせることで、重陽子による核反応から生じる中性子量を予測する新たな計算手法を開発しました。実測値との比較から、開発した手法は従来の予測手法よりも中性子発生量の予測精度が4倍以上向上していることが確認されました。さらに、本手法による予測値を中性子源の設計に用いられるシミュレーションソフトウェアで利用できるデータベースの形にまとめ、JENDL/DEU-2020として整備し、公開しました。

JENDL/DEU-2020を使用することで、シミュレーションの信頼性が大きく高まります。これによって、利用目的に応じた様々な中性子源を検討・設計・運転することが容易になり、基礎科学や医療など幅広い分野における中性子利用の促進が期待されます。

JENDL/DEU-2020は以下のホームページから2021年2月10日に公開しました。
https://wwwndc.jaea.go.jp/index_J.html

本研究成果は、日本原子力学会英文論文誌「Journal of Nuclear Science and Technology」に2021年2月10日付でオンライン掲載されました。

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患者の個性を反映したα線核医学治療の線量評価が可能に
〜オーダーメードの治療計画で、より安全で効果的な治療法の確立を目指す〜

2021.01.15

原子力機構・原子力基礎工学研究センター佐藤達彦研究主席(大阪大学核物理研究センター特任教授を兼任)、大阪大学大学院医学系研究科の渡部直史助教らの研究チームは、患者のPET-CT画像から自動で体内の積算放射能分布を推定し、放射線挙動解析コードPHITSを用いて吸収線量や治療効果を推定するα線核医学治療用の線量評価システムの開発に成功しました。

短い飛程で高いエネルギーを放出するα線を用いた標的核医学治療(Targeted Alpha Therapy、以下「TAT」という。)は、高い治療効果と少ない副作用を兼ね備えた新しいがん治療方法として社会の大きな注目を集めています。しかし、X線治療など従来の放射線治療で使われてきた線量評価システムはTATには適用できず、その開発が望まれていました。そこで、本研究では、患者個人のPET-CT画像から自動で体内の積算放射能分布を推定し、原子力機構が中心となって開発した放射線挙動解析コードPHITSを用いて吸収線量分布を計算するTAT用の線量評価システムを構築しました。また、α線の高い細胞殺傷効果や腫瘍内における薬剤不均一性を考慮して等効果線量(同じ効果を与えるX線治療の線量)を推定する新しいモデルを確立し、構築したシステムに搭載しました。これにより、これまで膨大に蓄積されたX線治療の臨床結果からTATの治療効果や副作用の大きさが推定できるようになり、オーダーメードの治療計画が可能となりました。

また、PET用核種(18F [フッ素18])をラベルした新しいプローブ(NKO-035)を健常者に投与した臨床試験結果を用いて、構築したシステムの検証を実施しました。その結果、図1最右図に示すように、陽電子を放出するPET核種の場合は、等効果線量は本来の線源の位置からかなり離れた場所まで拡がっていることが分かりました。さらに、核種をα線源(211At [アスタチン211])に変更して計算したところ、線量の拡散は少ないものの、臓器内の線量不均一性が高く、薬剤の投与量を増やしても等効果線量が単調に増加しないことが判明しました。これは、腫瘍内にできるだけ均一に拡がる薬剤開発がTATの成功のため極めて重要となることを示唆しています。

本研究成果は、欧州核医学物理誌(EJNMMI Physics)に2021年1月12日付けでオンライン掲載されました。今後は、構築したシステムを大阪大学医学部附属病院で実施予定の新しい薬剤を用いたTAT臨床研究に応用し、最適な投与量や分割回数の決定など、より安全で効果的な治療法の確立を目指す予定です。

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