三次元二流体モデル解析コードACE-3D
ACE-3Dは、気体と液体の混ざった流れである「気液二相流」の挙動を、数値流体力学に従って予測する計算プログラムです。気液二相流は、原子力を含
む発電所、化学プラントなど、熱を取り出す、気体と液体を反応させる場面において幅広く応用されている流れです。ACE-3Dは、
TPFITよ
り も大きな対象
を効率的に計算することを目的として作られた解析コードです。このため、気液の界面を直接的に取り扱うことは行わず、気液界面が関連する現象につ
いては、相関式と呼ばれるモデル関数と、ボイド率*と呼ぶ物理量を使って表現しています。ACE-3Dは、TPFITと比較して適用範囲は制限さ
れますが、それ ほど大規模な計算機を必要としないなどのメリットもあります。
*ボイド率:流体のある空間における気体の体積が全体に占める割合。1なら気体だけ、0なら液体だけが存在する。厳密には統計平均された値。
特徴: Features
3次元二流体モデルの採用
二相流の特徴の一つとして、気相と液相の速度が異なるという点があります。3次元二流体モデルでは、この気相と液相の速度に対して異なる式を解くため、
速度の違いを直接取り扱うことが可能です。速度の違いを考慮しない、あるいは簡易的に表現する手法よりも、より適用できる範囲が広いというメリッ
トがありますが、その反面、計算する式の数が多くなるため計算時間が長くなるというデメリットも存在します。ACE-3Dでは、並列計算機への適
用を図るなどを行い、このデメリットを解消しつつ、現実的な計算時間で3次元二流体モデルの利用を可能にしています。
超臨界圧流体までの対応
ACE-3Dでは、特殊なアルゴリズムを導入することで、二相流だけではなく、一般的に単相流として取り扱われることの多い超臨界圧流体にも対応しています。このため、圧
力の低下による超臨界圧流から二相流への変化や、逆に二相流から超臨界圧流への変化をシームレスに計算することができます。
様々な計算条件への対応
ACE-3Dでは、様々な条件での解析に対応するため、自由度の高い境界条件をコードの修正を行う事なく指定できます。また、重力加速度についても、任意
に変化させることができるため、地震などの震動が与えられた場合の計算にも対応しています。
解析例: Examples
円管内の空気ー水二相流
円管(断面が円形の管)内に、空気と水を混ぜた二相流を流したときのボイド率分布を計算しました。空気や水の流す量や、円管の直径を変えるとボイド率の分布が変わることが
知られていますが、ACE-3Dを使うことで、実験で知られていたこのような結果も再現することができます。
二相流中においた円柱後方の流れ
小さな気泡をたくさん含んだ水が流れている中に円柱をおいたときの様子です。円柱の後ろには渦ができ、その渦の中心に気泡が集まります。ACE-3Dの解析結果は実験結果
と良く一致しています。
燃料集合体の中の二相流
水の沸騰によって燃料集合体の中にできる二相流を計算しました。流れは下から上に向かっているので、下の部分で沸騰がはじまり、上に向かうにつれてだんだんとボイド率(蒸
気の量)が増加します。下の部分の沸騰は、燃料棒と燃料棒の間で起こりますが、上の部分では、蒸気は燃料集合体の中の広い空間の方に移動していま
す。ACE-3Dの結果は実験と定性的に一致しています。
超臨界圧水を用いた熱伝達試験の解析
超臨界圧水を使って行われた試験を模擬した解析を行いました。ACE-3Dで計算した壁の温度は試験で測定された壁の温度と良く一致しており、ACE-3Dによって、超臨
界圧水の熱伝達挙動を予測できることが確認できます。