ネプツニウム237(Np-237)とアメリシウム241(Am-241)は、軽水炉の使用済み燃料中に生成する長寿命のマイナーアクチノイド核種の中で主要なものです。加速器駆動炉や高速炉等において、これら核種の核変換処理を行う研究が国内外で盛んに行われており、その核反応データは重要です。これら核種の核反応データを検証するために、TCAとFCAにおいてNp-237とAm-241のサンプルの反応度価値を測定し、解析を行いました。
実験
Np-237やAm-241のサンプルを炉心に出し入れして、体系の臨界量の変化(反応度価値)を測定しました。この炉心の組成(核燃料と減速材)を様々に変化させ、中性子のエネルギー分布が系統的に異なる炉心を構築して、反応度価値を測定しました(図1)。
図1 臨界実験装置TCAとFCAを使った反応度価値測定実験[1]
核データの評価
炉心内の中性子の挙動をシミュレーションするモンテカルロコードMVPと核反応データベース(断面積)JENDL-3.3 を用いてこの反応度価値を計算して、測定結果と比較しました。その結果、図2に示すように、どの炉心でも反応度価値の計算結果は測定結果よりも小さくなることがわかりました。測定された反応度価値は、これら核種の中性子捕獲断面積に最も強く依存し、かつこの中性子捕獲断面積が小さくなると反応度価値の絶対値も小さくなります。これより、JENDL-3.3のNp-237やAm-241の中性子捕獲断面積は、幅広いエネルギー領域に渡り、実際よりも小さめになっていることがわかりました。この実験結果を参考に、JENDL-4.0ではNp-237及びAm-241中性子捕獲断面積の見直しが行われました。
図2 反応度価値の計算結果(JENDL-3.3)と測定結果の比(Np-237の例)[1]
参考文献
[1] T. Sakurai, T. Mori, S. Okajima, K. Tani, T. Suzaki, M. Saito,“Measurement and analysis of reactivity worth of Np-237 sample in cores of TCA and FCA", J. Nucl. Sci. Technol., Vol.46 No.6, pp.624-640 (2009).