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研究内容

Research

PSiプロジェクト

PSiプロジェクトの概要

ADSの研究開発を推進するため、計算科学を活用したPSi (Proton accelerator-driven subcritical virtual system)プロジェクトを開始しました。このプロジェクトでは、ADS実現に向けて、最小限の実験で合理的な設計を目指し、ADSを仮想的にシミュレートし「Design by Analysis」を実現することを目的としています。

図1にプロジェクトの構成を示します。


図1 PSiプロジェクトの構成

PSi-D(Design)では、設計の効率化、合理化を目指し、解析システムを整備し、これを用いて解析、検討を進めます。

PSi-X(eXperiment)では、実験が難しい課題に対して、その代替を目指す大規模・高精度な計算を行います(例えば、液体鉛ビスマス(LBE)流動解析や照射による材料への影響等)。また、PSi-Dで整備された解析システムの検証にも役立てます。

このように、本来、大規模な実験を通じて得られるデータを、計算科学を駆使して得ることにより、大規模実験施設等の建設を極力避け、合理的・効率的な研究開発を進めます。

PSi-D

ビーム窓連成解析システム

ビーム窓は、ADS固有の構造物であり、ADSの成立性に関わる重要な構造物です。この検討には、陽子ビームによる発熱(粒子輸送解析)、LBE熱流動解析、そしてビーム窓そのものの構造解析が必要となります。 詳細はこちら

これまでの検討では、図2左に示すように、各々の計算用のインプットを作成し、出力を変換して、次の解析を実施していました。しかしながらこのような流れは、手数がかかり、時間がかかるため様々なケースを取り扱うことが難しく、煩雑で、出力変換時に不確かさが混ざる恐れがありました。

そこで、新しい連成解析システムの構築を行いました(図2右)。このシステムでは、共通のジオメトリで各解析を行うことができ、出力の変換もシステム内にて自動で行います。これにより、効率的なビーム窓検討が可能となりました。


図2 ビーム窓連成解析システムのフロー

ADS核設計コードの高度化

ADSの燃焼特性を解析するため、ADS3Dコードシステムが開発されました[1]。

このコードは、JAEAで開発された汎用炉心解析システムMARBLE [2]上で開発されました。MARBLEは、既存の解析コードをカプセル化して利用することで、柔軟性、再利用性、拡張性、保守性を備えた解析システムです。図3に示すとおり、ADS3Dは、青色で示された既存のコードを組み合わせ、ADSの燃焼特性を解析するシステムとなっています。

最近では、新たに被覆管温度を計算する機能(図中Cladding temp.)や、燃料ふるまい解析コードFEMAXI [3]との連携もできるようになりました。MARBLEの機能をベースに、今後もADS3Dコードの高度化を進めていきます。


図3 ADS3Dコードシステムの構成

PSi-X

詳細な核破砕ターゲット領域の熱流動解析

核破砕ターゲット領域にはLBEが流れ、陽子との反応により核破砕中性子を供給しますが、この流れはビーム窓を冷却する役割も持っています。この流れを解くことは、ビーム窓の設計を行う上で重要です。

そこで、多相多成分詳細熱流動解析コードJUPITER[4]を用いて、核破砕ターゲット内の熱流動解析を実施しています(図4)。この詳細な計算により、測定が難しいLBE流れを予測するとともに、上述のビーム窓連成解析システムの流動解析の検証も行う予定です。

そこで、新しい連成解析システムの構築を行いました(図2右)。このシステムでは、共通のジオメトリで各解析を行うことができ、出力の変換もシステム内にて自動で行います。これにより、効率的なビーム窓検討が可能となりました。


図4 核破砕ターゲット領域の熱流動解析結果(左:温度、右:速度。多相多成分詳細熱流動解析コードJUPITERによるシミュレーション結果)

計算科学を用いた材料研究

ADSで用いる材料は図5に示すように、核破砕中性子照射、流動LBE、応力などの因子が関係し、重畳する環境で用いられます。

これらの知見を得るため、既存の施設・装置を活用して様々な実験を行っていますが、図中⑧については、大規模な実験施設が必要となります。しかし、現時点でそのような実験を行える施設はありません。

そこで、第一原理計算による検討を進め、どのような現象が起きるのかを理解し、既存データからの予測、外挿などを行う予定です。


図5 ADS材料が晒される環境因子

参考文献

[1] T. Sugawara, K. Nishihara, H. Iwamoto, et al., “Development of three-dimensional reactor analysis code system for accelerator-driven system, ADS3D and its application with subcriticality adjustment mechanism”, J. Nucl. Sci. and Technol., 53(12), pp.2018-2017, (2016).

[2] 横山、神、平井、他、” 汎用炉心解析システムMARBLE2の開発”、JAEA-Data/Code 2015-009.

[3] 宇田川、山内、北野、他、” 燃料挙動解析コードFEMAXI-8の開発; 軽水炉燃料挙動モデルの改良と総合性能の検証”、 JAEA-Data/Code 2018-016.

[4] S. Yamashita, T. Ina, Y. Idomura, et al., “A numerical simulation method for molten material behavior in nuclear reactors”, Nuclear Engineering and Design, 322, pp.301-312, (2017).